この格好から推測するに稽古でもしていたのだろう。この家には道場がある。しかも今いる廊下からそう遠くない。


自分と御爺様の話し声を聞き、こっそりと盗み聞きでもしていたのだろう。全く困ったものだ。



「結斗様はなにを考えているんだろう、と思って」



「何のこと?」



「藤岡紫音に随分と肩入れしているじゃない。

そんなに思い入れがあるのかしら。あの子は藤岡家の子よ。私達の祖先を滅ぼそうとした藤岡家の。

知っているでしょう。結斗様は櫻澤家本家の血を継ぐ上に、次期当主様なのだから。それなのにあんなに藤岡紫音に関わって……。

あの子が私達に関わって家の中に居られなくなっても、裏切り者扱いされても構わないじゃない。私達には関係ないことじゃない」