「当主様、行かれたのね」
気配がしたので、驚く必要はない。きっと御爺様が向かわれるまで、待っていたのだろう。
「なにか用か、静寂」
視線、体を後ろへ向けたとき、姿を見せたのは霧澤静寂。
普段は鬱陶しげに垂らされた漆黒の長髪は赤い紐によって、ひとつに纏められている。所々濡れているようだ。これは雨や、シャワー…外部からもたらされたものではなく、己から発生した汗という奴だろう。服装は制服ではなく小袖に袴。片手には薙刀。木製のそれは新しいものではなく、長年使ってきたことによって感じさせるものがある。だが決して傷等はなく、前と変わらない美しさを保っている。
