薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~




昔は美しかったであろう、長髪は既に廃れ、白髪と化している。髪に覇気というものがなく、艶やかさに欠けている。煩わしくないようにであろう。緩くであるが紐でまとめられている。肌もまた昔のような瑞々しさの欠片などない、水分が抜けたかのように皺ばかりで、骨が浮き立つ。身に纏うのは翡翠色の着物。帯は紅消鼠。着物の色合い全てが御爺様に合っている。



「結斗か」



「はい。御帰りになっていたのですね」



御爺様は仕事柄家へ帰ってくることなど滅多にない。なんせ櫻澤家当主だ。一族を取り纏めるにしても、妖退治にしても家にこもりきりで仕事などできない。我々一族が本拠地としている場所は別にあるのだから。


にしても御爺様が家に帰って来るなど珍しい。