そもそもあの時藤岡紫音を助ける形になってしまったことは間違いだったのだ。こっそりと所持していた小刀で突けばよかったのに。 何故自分は彼女の前に姿を現したのか分からない。咄嗟に体が動いてしまったのだ。後日、隠れて見張っていた静寂にしつこい程叱られたではないか。 あれは後悔と反省しか生まない行動だった……はずなのに、あの頃清々しい気持ちになった。一瞬ではあるが。 にしても心が痛む。これもいずれおさまるだろうか。そうであってほしい。