アベルが両手を振り上げ、空へ言葉を繋ぐ間。 男の言葉により周囲の木々が動き出す。 樹を揺らし、葉を落とし、長く伸びた枝を振り上げ、根が地を這う。 グラリグラリと。 歩き方なんて知らない木々達が、ゆっくりとしたスピードでアベルに向かって進んできた。 そんな木々達の姿に、味方であるはずの兵士達が恐れおののき、囲っていたはずのアベルへ道を開けた。 正しくは、木々が通る道。 それを作る兵士は持っていた槍や剣を杖代わりに地面に刺し、自身がまともに立てるようにとしていた。