そんなオレだけど
会社では相変わらず要領良く過ごしていた


ただ、最近、社内の女どもの事がますます面倒に思っていた


やれ、エンジェルスマイルだの
癒し系草食男子だの勝手な事、言いやがって


『誰一人ちゃんとオレの事なんて見てねーくせに』


だから、ちょくちょく考えるようになった
何か、良い手はないかなと…


それである時ふとオレは思い付いた


嘘の恋人をつくろう


って


それで、面倒な事から
逃れようって


口の固そうな女だったら
誰でも良かった


むしろ、地味なおとなしめの
都合のいい女を求めようと思った


結局、ちょっとしたきっかけで同じ課の有にその役をやってもらう事になったけど


実は、前から有の事は少し気になっていたんだ


見た目は確かにパッとはしなかった


何処にでもいるような
地毛なのかほんの少しカラーいれてるのか
わかんないくらいの栗色の毛に


肩までの髪はゆるゆると
ウェーブがかかっていた


顔立ちは悪くは無いんだけど
なんつーか、
化粧っけがなくて
もっと、メイクすりゃいいのにって
きっと、映えるだろうなとかは思ってた


だけど、一番気になっていた理由は他にあった


それは有が毎朝煎れてくれるお茶の味が
とても美味かったからだ


オレもこれでも茶の道をかじってる訳で
それなりに普段使いで飲むようなお茶の味にも
うるさい


ましてや会社の茶葉なんか高々しれてる


オレは朝のスタートに飲むお茶の味に
うんざりしていた


手をつけることもなかった


けれど、いつからか
楽しみになっていた


それは有が入社して
オレと同じ課に来てお茶を煎れるようになったからだ


有の煎れるお茶はとても優しい味がしたんだ