結局、ほとんど眠れなかったオレは


早朝から庭を散歩していた


「気持ちがいいもんだな」


庭の草木の香りと朝の澄んだ空気がまざって


吸い込むと、ぼーっとしていた頭が少しずつスッキリとしてくる


「実家にいた頃はこんな風に庭を散歩するなんてなかったっけ?」


有にも教えてやりたいなって、ふと頭を過る


冷静になってきた頭が、家に有、一人を残して飛び出してきた事を責め始める


「有、あの広いベッドに一人で眠れたか?」


と呟いてみる


するとーーー


「おはようございます。翔真坊っちゃんいらしてたんですね」


と庭の掃除をしていた沢さんに声をかけられた


「あぁ、夕べ遅くにな」


何となく、目を反らして言う


「お一人で?」


どうやら沢さんには全てお見通しの様だ


オレはここ最近の有との事を正直に話した


もちろん、どうしてオレが今ここにいるかも話した


じっと黙ってオレの話を聞いていた沢さんが


やっと口を開いた


「坊っちゃん、今回に限っては私から何も申し上げれません」


「えっ…」


オレは昔から親にも相談出来なかった事を沢さんには話していた


沢さんはオレの話をいつだって親身になって聞いてくれていた


そして何かしらのアドバイスや


時には厳しく叱ってくれたりもした


なのに何でだ?


今回に限って沢さんは


何でそんな事を言うんだ…