灯火-ともしび-

「…っ…。」

「な、なんで夏海さんが照れるんですか!?恥ずかしいのは俺の方ですよ!」

「だっ…だってそんなこと言われるの初めてだし!」

「そ、そーかもしれないですけど!
っていうかそれに…。」

「…?」

「…夏海さんからいつもの夏海さんの匂いがしなくて…焦りました。」

「え…?」


いつもの私の匂い…?
それはだって今…


「…風馬の香りがする…から?」


こくんと頷く。


「焦って思わず手が出たっていうか…もう本当にごめんなさい!」

「…いいよ。私が色々鈍かったのも悪い…し。」

「もーしません!本当にごめんなさい!」

「…いいって。」

「…着替えます?」

「んー…もういいや。もうちょっと風馬の香りがするここでごろごろしていたい気分。」


そう言って少しごろんと動くと、少し身体をこっちに向けていた風馬の胸元にぶつかった。


「…ねぇ、夏海さん。」

「なに?」

「キス、までならいいんですよね?」

「え…な、何を…んっ…。」


振って来たのは優しいキス。
さっきのキスを無しにしてしまうほどに甘くて優しいキス。