灯火-ともしび-

俺がそう呟いた時、夏海さんが出てきた。


「お風呂、ありがとう。」

「っ…は、はい!あの、とりあえず俺の部屋に…。」

「え、いいの?部屋入っても…。」

「え?」

「風馬の部屋がどんな感じなのか見たかったのよね。」


…だめだ。なんだこれ、可愛すぎて直視できない。


「こ、こっちです。」


ペタペタと床に触れる夏海さんの足音。
部屋の前に辿り着いた俺は理性と欲望のせめぎ合いの真っただ中にいた。


「ど、どうぞ。」

「うん。ありがとう。」


…そんな顔しちゃだめだ。それに、そんなホイホイ男の部屋に入ってもだめだ。…なのに。


夏海さんを招き入れ、パタンとドアを閉める。
…二人だけ、完全に二人だけの空間だ。


「こんな形になっちゃったけどこうして風馬の部屋見れて…っ…。」


後ろからぎゅっと抱きしめる。
その細くて白い身体を。


「ふ…ま…?」


その肩に顔を埋め、息を吸い込んだ。
気持ちを落ち着かせようと思ってしたことだったのに、逆効果だ。
いつもと香りが違って逆に落ち着かない。


…彼女から、自分の匂いがする、なんて。