灯火-ともしび-

* * *


「それじゃ、夏海さん、あーん♪」

「は、はぁ!?ひ、一人で食べるわよ!それは自分で食べなさい!」

「えぇ!?普通恋人同士って言ったらこれでしょ!
やりたかったんですよーお願いします。」

「無理ったら無理!」

「…そこで嫌って言わない夏海さんが好きです。」

「~っ…どうせ私が折れるハメになるのよね…。
なんだか分かって来た。風馬のペース。」


分かって来た。私はどうせ、彼には敵わない。
明るい笑顔にも、私を大切にしてくれていることが伝わる動作の一つ一つをとっても、…そのどれに対しても、私は信じられないくらい弱いみたいだから。


「はい!じゃあ口を開けてくださいよー?」

「た、楽しそうね…。」

「楽しいに決まってます!夏海さんと一緒なんですから。
はい、じゃああーん♪」


仕方ない。子どもの遊びに付き合ってあげる気持ちになればいい。
自分の中でそう言い聞かせて口を開ける。


「どうですか?お味は。」

「ん…おいひぃ…。」


時間も少し経ってるからか、熱過ぎず、少し猫舌な私には丁度良い。


「あ、ソース。」

「え?」


彼の指先が私の口元のソースを取り、そのまま彼が自分の指先を舐めた。


「じゃ、次は俺の番ですね!くださーい!」

「え、わ、私もやるの?」

「当たり前じゃないですか!夏海さんばっかり食べるなんてずるいですよ!」

「だってそんなの自分で食べれば…。」

「やってくれないとちゅーしちゃいますよ?」

「…や、やります!」

「…ふ、複雑です。」


私は割り箸を持った。