灯火-ともしび-

「な、何を…。」

「今まで独占欲とかあんまり強い方じゃなかったんですけど…。
夏海さんはちょっと特別みたいです。悪い虫が寄ってこないようにおまじない。」

「い、意味が分かんないんだけど!?」

「大丈夫です。お風呂入る時にでも分かりますから。」

「な、なにしたのよあんた!」

「別にそんな大したことは。」

「何かしたくせに嘘吐くなー!」

「俺が夏海さんに嘘吐くはずないじゃないですか。」

「もー!私がこういうことに不慣れだからって私で遊ぶなんてっ…!」


そう言って彼の胸を叩こうとすると、私の腕はいとも簡単に彼の腕に掴まった。


「遊んでません。
…ごめんなさい。慌てる夏海さんも顔を真っ赤にする夏海さんも…キス、苦しくても頑張ってる夏海さんも可愛くて、つい、やりすぎちゃいました。」

「…可愛く言ってもだめ…だし。」

「でも俺、夏海さんに嘘吐きたくないんで。
…こんな俺が嫌ならこの場で振ってくださ…。」

「だから、どうしてそうなるのよ!」

「ごめんなさい。
ホント、夏海さんが可愛くて…我慢はどうもできそうにないです。」


明るく開き直ってそう言う彼は私がかつて知っていた安達風馬でもあり、知らない安達風馬でもあって、…気持ちは複雑だ。


「さて、少し落ち着いてきましたし、たこ焼き買いましょう!」

「…買ったらそろそろ帰りましょ。
途中の公園かなんかで食べた方が…落ち着くし。」

「そうですね。それじゃ…。」


私の手をぎゅっと握って彼が進み出す。


「行きましょう。」


彼は私よりも1年短く生きているのに、どうしてなのだろう?
火を灯して、知らない想いの元へ連れていってくれるのは。