灯火-ともしび-

「…ゼミではただの後輩で、そこに性別的な感覚はなかったのに…。
今日、風馬が男の人なんだって思い知らされた。
手の大きさとか、強い腕とか、眼差し…とか。」


熱い。また熱さが蘇ってくる。
熱がこんなにも逃げてくれないものだとは知らなかった。


「それに、嬉しかった。
そんな風に思ってくれていたことも、言葉にしてくれたことも。
だから、ありがとう。」


ありがとうの言葉だけは真っすぐ目を見て言いたかった。
言葉足らずな気がするけれど、でもこれ以外に今の気持ちを伝える言葉が思い当たらない。


「…っ…今、この距離でそんな風に微笑まれると、我慢…できない…んですけど…。」

「え?」

「いやまぁ…もう1回我慢を爆発させちゃってるわけでもう俺何にもできないっつーかしちゃダメですけど…。」


そう言って頭を抱える風馬が、いつもの風馬に戻ったみたいでちょっとだけホッとする。
…謝罪とありがとうを込めて…ちょっとだけ驚かせてあげようか。


「ねぇ、ちょっとほっぺ、なんかついてる。」

「え、どこですか?」

「そこじゃない!ちょっと屈んで?」

「はい…。」


少しだけ背伸びをして、近付いた頬に唇をあてる。


「っ…!?」


灯りが真っ赤な風馬の顔を照らす。