灯火-ともしび-

私は真っすぐに彼を見上げた。


「謝らないで。
風馬は何も…悪いことはしていない。」

「でも…。」

「ごめんなさい。あなたに訊いたのは私なのに、その内容に耐えきれなくなって逃げ出す…なんて、最低ね、私。」

「耐えきれないって…嫌、でしたか?」


彼の声のトーンが下がる。
…違う、そうじゃない。


「そうじゃない。あまりにも真っすぐに向けられた想いにどう応えるのが良いのか分からなくて、落ち着きたかったの。
なんか今日、ずっとざわざわしてた。気持ちが、ずっと。」

「ざわざわ、ですか?」

「うん。」


認めてしまえば、すっと言葉にできる。


「私はいつもと違った?」

「…はい。」

「風馬もいつもと違って見えた。少なくとも私には。」

「どういうことですか?」


ただただ、彼の視線は真っすぐに向けられている。
負けないように私も真っすぐに見つめ返す。


「いつもより大人びて見えた。
私の知らない、表情に…見えた。」

「え…?」


ここまで言うと、なんだか恥ずかしい。
顔がまた火照り始めた。