灯火-ともしび-

ちゅっという私の知らない響きを耳に残して、唇は離れる。
放心状態というものに半ば近い。





「我慢の限界です。」





手が離れたと同時に、身体が強く引き寄せられる。
背中に回った彼の腕が、私と彼の距離をゼロにする。


「心配しました。すごく、です。」

「…ごめんなさい。」


謝るしかできない。
声が弱弱しくて、私を抱きしめる腕が強くて、それ以上言葉にならない。


「夏海さんは可愛いんです。綺麗なんです。かっこよくてみんなの憧れで、すごく強くて。
…でも、本当は普通の女性なんですよ。
あんな風に一人で人混みの中に飛び込んだらああなるのは俺じゃなくても分かります。」

「……。」

「俺が守りたいなんて、おこがましいことだって分かってます。
でも心配なんですよ。そう思わずにはいられないくらいに。」


苦しいほど抱きしめられて、きっと浴衣は少し着崩れてしまう。
でも今、そんなことはどうでもいい。


「…キス、ごめんな…。」

「謝らないで。」

「え…?」


彼はゆっくりと私の身体を離した。