灯火-ともしび-

さっきいた場所まで戻ってきた。
飲み物はまだちゃんとあった。


手が離されないまま、立ち尽くす。
いたたまれなくなって、私が先に口を開く。


「…ごめんなさい。」

「何がか、分かってます?」

「勝手に飛び出しました。」


何故か敬語になる自分が滑稽に思える。それでも謝罪はすべきだろう。


「夏海さんは本当に無自覚なんです。
自分が今日どれほど綺麗で可愛くて…どれだけ俺が我慢してるか分かってない。」

「我慢…?」


思わずパッと顔を上げた。
その瞬間…







細い指が、私の顎にかかった。
そして…







不意に視界が彼でいっぱいになる。
唇に、優しく彼の唇が触れた。