灯火-ともしび-

「なかなか直視できなくて困るレベルです。夏海さん。
夏海さんは色々無自覚だからほんと、困ります。」

「なっ…色々無自覚ってどういう意味よ?」

「言葉通りの意味ですよ。
酔っ払った夏海さんもめちゃめちゃ可愛かったですし。」

「そっ…それは本当に申し訳ないことをしたなと…。」


本当にあの日の私はどうかしていた。
酔っ払って記憶まで失くして、挙句後輩に送ってもらうなんて最悪だ。


「いや…俺としてはかえってラッキーでしたけどね。」

「ラッキー?」

「寝顔も見れたし、おんぶもできたし、可愛い寝言も聞けたし。」

「寝言!?」

「はい。小夏ちゃんのこと、ものすごく可愛がってるんだなぁってことが伝わってくる寝言でしたよ。」

「…っ…。」


あの日に戻れるならあの日の自分をぶん殴りたい。
そんな醜態を晒してしまったなんて。


「それにこんなに綺麗な夏海さんの隣を歩くことができました。
最高の夏の思い出です。」


これ以上は無いと言うくらい真っすぐな瞳。
それはただただ優しくて、本当に年下なのかを疑わざるを得ない。


…彼はこんなにも大人びていただろうか?


燈祭りの灯火が彼を明るく照らす。


オレンジ色を背に受ける彼は、いつもの彼と違って見えるのはどうしてなのだろう?