灯火-ともしび-

そして彼は私と少し距離を取って隣に座る。


「ふー…人混みは暑いですねー…。夏海さん、大丈夫ですか?」

「…なんとか。でも助かった。」

「夏海さん、手が思ってたよりも小さくてびっくりしましたよ。」

「…あんたは思ってたよりも大きかった。」

「まぁ、男ですし。」


そう言って笑みを浮かべる顔は、やっぱりいつも見ている安達風馬とは少し違って焦る。
…頬が火照っている。


「顔、赤いです。」

「ひゃっ!」


ピタリと頬にオレンジジュースの入った紙コップが頬に当てられる。


「な、なに…!?」

「熱いのかなって。こうやるの気持ち良くないですか?」

「す、涼しいけど。」

「だからしばらく当てておきます。あ、でもメイク落ちちゃいます?」

「…そんなのは大丈夫。」

「でも…。」

「大したメイクはしてないから。」

「そんなことないですよ。」

「え…?」


不意に真面目なトーンになった声に私は彼を見上げる。
真剣な表情、そして真っすぐな視線が私を貫く。