「本当ですか!?」

「ほ、本当よ!」


トーンがものすごい勢いで変わった。
…奴の表情まで何となく分かる。


「燈祭り、行くわ。」

「ぃやったー!!!!!」

「うるさいっ!」


受話器越しに聞こえる浮かれた声。
子どもみたいに底抜けに明るい、元気な声。
その声に奴の表情を思い浮かべる。


「…一つ条件がある。」

「なんですか?」

「浴衣はあんまり期待しないこと。」

「んー…それは無理ですね。」

「なんでよ?」

「だって、夏海さんが着るんですから。」


理由になっているようで論理的な理由にはなっていない返事に思わず頬が火照る。


「…夏海さん?もしかして照れちゃいました?」

「だ、誰が!期待はずれだったからって言って怒られても、私は責任取れないわよ!」

「大丈夫です。夏海さんが来てくれるだけで俺にとっては期待以上です。」

「あっそ。じゃ、土曜日。」

「はい!待ってます!」


ピッ。


電話を切ったのは私。
それ以上、言葉が続くと火照りが抜けない。
…そんな気がした。