Secret Lover's Night 【連載版】

疚しいことはない!…とは言いきれないけれど、まぁ、まだ抱いてはいない。

けれど、気持ちの面ではどうだろうか。

手放したくないと、自分だけのものにしておきたいと願うこの気持ちは、本当に疚しくないと言えるだろうか。まだ17歳の、あんなにも真っ白な少女相手に。

頭を悩ませる晴人に構わず、吉村は言葉を続ける。

「俺ね、ちょっと仕事で長い間家空けてもうて…久しぶりに帰ったら、預けてた家に千彩がおらんのですわ。誰に聞いても知らん言いやがるし、地元帰っても見付からへんし…ずっと探し回ってたんですよ」
「そう…ですか」
「いやぁ、ええ人に助けてもろて良かった。これで漸く地元に…」

吉村の言葉を遮るように、タイミング良くノックの音が響く。それに慌てて反応したのは、言わずもがな晴人で。

「王子、いい?姫連れて…あっ!姫待って!」
「はるここー?」

顔を覗かせた千彩の姿を見て、ガタンと二人が立ち上がる。


「ちー坊!」


先に駆け寄って抱き締めたのは、その姿が現れるのを今か今かと待ち焦がれていた吉村だった。

「ちー坊!ごめんな?ごめんな?辛い思いさせて悪かったな。許してな?」
「…え?」

戸惑う千彩の頭を撫でながら、吉村は感極まって泣き始めた。それをただ眺めているだけしか出来ない晴人は、嗚呼…と声にならない想いを吐き出す。

そして、そんな晴人を眺めるメーシーも。

「ちー坊…俺の可愛いちー坊。お前は俺の宝物やで。もう絶対離さへんからな」
「おにー…さま?おにーさま!」
「せや。おにーさまや。お前を世界で一番愛してるおにーさまや」

腕の中の千彩が、何度も「おにーさま」と呼びながら同じように泣き始めて。これはいよいよダメだな…と、晴人はガックリと肩を落として椅子へ腰掛けた。