Secret Lover's Night 【連載版】

無言のまま、重苦しい時間が流れる。メーシーが出てすぐに恵介も所長に呼ばれて出てしまい、今この部屋には、吉村と晴人の二人きり。


「吉村さん、あの…」


何か言葉を掛けようにも、その先が続かなくて。きょとんとする吉村に、スッと灰皿を差し出した。

「吸われます?」
「あっ、あぁ。すんません」
「…いえ」

カチリと火を点け、肺いっぱいに不純物を吸い込む。落ち着かない…と、眉間にシワを寄せた時だった。


「ハルさんは、おいくつなんですか?」


不意に問われ、器用に煙りを詰まらせた晴人がゲホゲホと噎せる。それを心配そうに見ながら、吉村は白い煙りを吐き出した。


「千彩とは…どうゆう?」


尤もな質問だろう。けれど晴人は、それに対する明確な答えを持ち合わせていなくて。

一度ギュッと目を瞑り、意を決して言葉を押し出した。

「僕の年齢は28で、千彩とは…一緒に暮らしてます。一週間ほど前に、歌舞伎町で知り合いました」
「ほんなら…千彩の客…ってことですか?」
「いや、そうじゃないです。たまたま泣いてる千彩を見つけて…それで自分の家に連れて帰ったんです」
「…え?」
「黙って連れて帰ったから、店の人は探してるかもしれません。すみません」

俯く晴人に、吉村はバンッとテーブルを叩いた。

「ほな、千彩を助けてくれはったんですね?ありがとうございます!」
「いや…そんなつもりはなかったんですけど…」
「いやいや!恩人ですわ!ありがとうございます!その上一緒に住まわせてもろてるやなんて…えらいお世話になってすんません」

恩人だと手放しで喜ぶ吉村を見て、晴人の想いは余計に複雑に絡まってくる。