Secret Lover's Night 【連載版】

空腹と暗闇。大嫌いな二つが千彩を襲う。


「ねぇ!開けてよ!はるのとこ帰りたいよ!」


ドンドンと力一杯扉を叩きながら、千彩は扉の向こう側に居るだろう時雨に訴える。勿論、返事は無い。


怖い
怖い
帰りたい


照明のスイッチを見つけられずにいる千彩は、少しでも明るい場所へ…と窓際に腰を下ろし膝を抱えた。

「ママ…」

大きな満月を見上げ、小さく呟く。肌身離さず着けている、うさぎのチャームの付いたネックレス。それをギュッと握りしめ、千彩は恐怖に耐えた。

こんな時、涙は出ない。声を出して泣けば、どこかの怖い人に見つかるかもしれない。痛めつけられながらも必死に自分を庇ってくれたボスを思い出し、千彩は大きく息を吸ってギュッと両拳を握った。


「ちさのパパは、ヤクザ屋さんなんやから!えらくて、次のボスなんやから!怒ってもらうから!」


何とも子供じみた主張なのだけれど、こういった窮地に立たされたことのない千彩にはこれが精一杯で。フルフルと肩を震わせながら立ち上がり、ドンッと床を踏みしめた。


「お前らなんかすぐつぶしたるからな!」


いつかボスの子分がそう言っていた。それがどんな意味を持つかも知らず、千彩は思い出せる限りの乱暴な言葉を並べる。