「感動話も何も泣けねえわ」
「何だとコノヤロー!」
「パティオのほうが感動した奴」
翼が挙手の合図をすると全員が無言で手を上げた。
う、嘘!?パティオに負けたの?あんな一生懸命に話したのに!?辛い思いをした数年間の記憶をわざわざ掘り出したのに!?
はじめは怒りだったが次第に涙が目に溜まり始める。潤む瞳で目の前が霞む。目を潤ませマジ泣き5秒前の私に彼等はギョッとした。
「うううっ。酷いよっ」
「おいおい。ど〜した蕾ちゃん。らしくねえじゃねえの」
「だ、だってえ……」
「…泣かないで?」
「る、るいく、んっ」
「蕾さんどうした?パティオに負けたのが悔しかったのか?」
「オメーまじ空気読め」
「…朔退場」
率直に聞いてくる朔君に籃君と涙君がバッシング。2人は私の隣に座り頭を撫でたり背中を擦ってくれる。
可愛すぎる生き物!普段は冷たいのにこう言うときだけ優しいんだね!今すぐにでも飛び付きたいが――――――――生憎そんな気分じゃない。涙が溢れだして止まらない。朔君違う。パティオなんかどうでも良いんだよ。
「わ、わたしが話してるのっ、きいてないっ、」
みんなTVばっかりで私の話を聞いていなかった。途中で止めるのも何だから最後まで話してたけど虚しくなっちゃったよ。
「ひ、ひどい」
「すみません」
「いやあ、ゆるさないっ」
「違います。聞いてましたよ」
「う?」
「真面目に聞けなかったんですよ。聞くに耐えなくて」
謝る司くんに首を振り拒否するが不可解な事を言われて首を傾げた。涙で濡れた頬をソッと指で拭われる。壊れ物を触るような手つきに思わず睨んでいた瞳が和らぐ。
「ほら【聞くも涙語るも涙】って言うじゃないですか。泣きそうな蕾さんを見るのが耐えきれなくなったんですよ」
「っひく、ぱ、ぱてぃおは?」
「ただの気を紛らすためです」
「……も、なに、それ」
「泣かないでください。蕾さんに泣かれるのと俺まで泣きたくなります」
「ふえっ、ばかあ、」
ギュウッと抱き締められる。司くんの胸に顔を埋めて泣く。
よ、よかった……っ。本当に誰も聞いていないと思ったもん。
安心して気が抜けた途端に涙が止まらなくなった。ギュウッと腕を掴めば、司くんも後頭部と背中に回した手に力を入れて強く抱き締めてくれる。
―…司くんに身体を委ねる私の横では犯人探し。
「誰がパティオを掛けたんだ?」
「おい朔。何で俺を見て言ってんのかな〜?ちげ〜よ。俺が蕾ちゃんから目逸らしたときパティオは終盤だったぜ?」
「……俺も」
「おっ俺じゃねえし!なに見てんだよ!?」
「いや〜?てっきりオメーかと。パティオ掛けた奴が蕾ちゃんを泣かしたっつ〜ことだろ?いや〜。白状しちまえよ楓くんよ」
「違うっつってんだろうが!」
私は司くんの胸元から顔を離すと輪が作られたほうを見る。
朔君は違うらしい。涙君も違う。籃君も楓君も。もちろん司くんも――――――――――なら残るはただ1人。
1人だけ輪から離れてソファーで足を組む奴に全ての視線が集中する。視線に気づくとムッとする。機嫌を損ねたのか、やけに低い声で呟いた。
「…何だよ」
―…何から何まで偉そうな男だ。

