こうして僕らは、夢を見る

高が高校生の部活。然れど部活。あんなに美形揃いなら追っ掛けが居ても頷ける。恵ちゃんが応援にしたくなるのも無理はない。



あと数歳くらい若ければ私も追っ掛けに成ってたかも。【L・O・V・E・TENNIS】とか馬鹿げた感じで叫んでいたかも!ふはははは!



若き高校生だから出来る至り。桜子も【テニス部FC】とか在ればノリノリで著名してそう。



破天荒な応援風景を目にした私は些か慌てる。恵ちゃんがあの場所に居たことに。愛の熱気に包まれた女の子達の中に恵ちゃんが?



もし恵ちゃんが恐い女の子だったら、ど、ど、どうしよう…っ!



司くん達と知り合いだとバレたら少し怖いような気もする。記憶に残る恵ちゃんは朗らかな子だったけど恋する乙女のパワーは凄いからね。恋は盲目って言うし。



溜息を付きたい衝動に駆られるが成長した恵ちゃんにも久し振りに会いたいと思った。





「お前は?何で居んだよ?」

「私?私は荻窪先生に逢ってたの。相変わらず良いひとだったよ。涙腺崩壊しちゃったもん。」

「へえ。あの鬼教師に?態々逢いに来るとか物好きだな?恵が最近怒鳴られた挙げ句、廊下に立たされたって嘆いてたぜ?」

「はは、」





私を異端視するように頷く崇。それとなく貶されている気もするが空笑いを浮かべる。



荻窪先生の鬼教師の異名は健在らしい。でも影では慕われている。生徒想いの善き先生だからね!





「メイクぐちゃぐちゃでパンダにそっくり!涙が黒くて最早ホラーもんだわ。写メっても良いかよ?夏のホラー企画とかに送ったら良い線まで行くと思うぜ?」

「え!?ウソッ!メイク落ちてるの!?ウォータープルーフなのに!何で!?ヤダー!」

「嘘ぴょん。」

「だと思ったぴょん。」





頬に手を添えてキャーキャー叫んでいたのを一変。ケロッと覆す。おチャラける崇に乗ってみた。





「だってメイクで顔が爛れてたら荻窪先生が言わない訳ないじゃん。あの人は私が恥を曝すような真似はさせないよ。」

「確かに。荻窪じゃなかったら騙せてたのによー。チキショー荻窪の野郎。邪魔すんなよー。」

「ふふんッ。甘いんだよバーカ。下らない嘘を付くくらいなら出直してきたまえ崇君よ。」





鼻で嘲笑ってやった。だけど荻窪先生じゃなきゃ完璧に騙されていたと思う。滅茶苦茶泣いたから。暑さと涙のダブルパンチで化粧はヨレヨレだもん。



荻窪先生万々歳!騙されていたら今頃トイレに猛ダッシュだよ。余計な体力を浪費する羽目になっていた。