「俺だって!オ・レ!」

「………」





誰だよ。



な・ま・え!名前を教えて?ねーむぷりーず!ぷりーず!ねーむ!――――――叫びたくなるが意外にも爽やかな笑顔に口を紡ぐ。見た目は確実に『ヤ』が付く職業っぽいのに優しそうな声。ギャップが強い。



どう反応して良いのやら。






「……え、分かんねえ?」






何も言わない私に驚いたような声を出すグラサン。申し訳無いけど全く見に覚えがない。






「ショックだぜ。俺は蕾のこと覚えてんのによー!お前は番長の存在すら忘れたのか?」






そう言うとサングラスを外す。



バンチョウ?ばんちょう?



……………Banchou?






自らを番長と呼びサングラスを外した男。サングラスを外して露になった眼。その眼は厳つい風貌とは裏腹に屈折のない純粋さが漂う円らな瞳―――――――――私はこの瞳を覚えている。



左手で口元を押さえて右手でサングラスの男を恐る恐る指差す。



ま、まさか、






「た、崇(たかし)?」






多分。いや。絶対に崇だ。


この円らな瞳は崇だ。






「お?覚えてんのか舎弟。」

「誰が舎弟だ。ふざけんなよ。」





憎まれ口を叩くがお互い笑顔で会話している。



普通科に馴染めなかった私をクラスの輪に率いれてくれたのが番長。番長とは文字通り番長。クラスの奴等を従えて偉そうに踏ん反り返っていた。中身は良い奴だが見た目は最悪だった。



何故か意気投合し崇とは2コ1と呼ばれる仲まで発展。所謂相方のような存在。






「ひ、久しぶり!」






久しぶり過ぎる相方・崇との再開に興奮気味で話す。


嬉しさの余りピョンピョン跳び跳ねるが、頭を叩かれた。






「誰が久しぶりだ。ああ?」

「った!」

「同窓会セッティングしても一度も来てねえ奴が良く言うぜ。しかも音沙汰無し。嘗めてるだろ?」

「す、すみません。」






円らな瞳が鋭くなり眼を付けられた。怖っ!さすが番長。崇の恐ろしさは健在か。確か今は土木関係の仕事に付いてると聞いたことがある。繋ぎとか似合いそうだな。でも「ヤ」の付く職業でも崇なら遣っていけるよ。意外と真面目だから逸れないだろうけどね。






「何か行き辛いって言うかさ〜。何年も会ってない子とか居るし。気まずくなるなら行かないほうが増しじゃん?」

「はあ?だからって一回くらいは来いよ。お前に会いたいとか言う物好きなヤツは山程居んだから。一回も来てないの蕾だけだぜ?」

「嘘!?私だけ!?地方から出た子とか嫁いだ子とかで来てない子1人くらい居るでしょ!?」

「その前に参加してる。」

「えええええ――……」






驚愕のあまり声が出ない。