「さ。身体に障ります。横になりなさい」

 空いた椀を母様に渡し、横になる。

 眠れば、また会えるかな?








 またふと目を開けると、やはり僕は羅后のいる湖に来ていた。

「また来たのか? 呆れた童じゃ」

 舞うのを止め、僕の所にやって来る羅后。
 呆れた顔してやって来た羅后とは反対に、僕は笑顔で返した。

「聞きたいことがあって来たんだ。羅后が言ってた六花って何?」

 羅后はその言葉を出すと、少し悲しげな目になった。

 いけないことを聞いたのかな?

「六花とは、この雪のことだ。お前達人間には見えぬだろうが、雪は小さな六角形の花の集まりなのだ。妾は約束したのだ。この六花の降る夜、妾を迎えに来るからと、ある男に言われてな。ずっと待っているのだが…」

 顔を少し下げながら、羅后は泣きそうな顔になった。

 これが鬼?

 人間と同じように恋をし、約束を守るためにけなげに舞い続ける。

 いったい誰があんな間違いだらけの鬼の話なんかしたんだろ?