ふと目を覚ますと、心配そうに僕の顔を覗く母様の顔があった。
僕が笑顔を見せると、緊張が解けたように胸を撫で下ろしながら一息ついた。
「よかった佐平さん。声をかけても起きないんだもの。心配しましたよ」
「ごめんなさい母様」
僕は商い問屋の次男坊。生れつき身体が弱く、いつも父様や母様、そして兄様に迷惑をかけっぱなしだ。
「ねぇ母様。『羅后』って知らない?」
粥をよそいながら、母様は目をしかめた。
「どこでその名を…。その名は言ってはなりません」
「なぜですか?」
ぼくはよそってくれた粥を、サジで掬いながら口の中へ入れた。
「その名を持つ者は、鬼門の長だと言う、言い伝えを聞いたことがあるわ。男も女も魅せられるその美しさで、魅せられた者は凍り付けにして食らうと言われています」
確かに凍り付けにして食べてた。
おいしくないって言ってたけど。
でも、僕を助けてくれたんだよ。

