すべてがゆっくりに見えた。 私は兄ちゃんに引っ張られ、私がいた場所には兄ちゃんがいる。 ナイフが、兄ちゃんの背中に刺さっていくのがはっきりとわかった。 グチュリと嫌な音がする。 「……っ」 兄ちゃんの額から汗が垂れてきた。 「……妹護るために自分を犠牲にすんのか」 麻白は表情を変えずにナイフを兄ちゃんの背中から引き抜いた。 ナイフは、真っ赤に染まっている。 私の血と兄ちゃんの血が混ざりあって、床に落ちた。