新撰組のヒミツ 弐



安藤が不思議そうな目で見ている。立花と光、もう一人の無言でいる浪士を順繰りに見ると、すべきことを迷ったのか、光に無言で指示を求めてくる。


何もするな、という気持ちを込めながら僅かに首を横に振ると、安藤は光を案じるような表情を向けてきた。


そのやりとりにすら立花は敏感に気付いたようで、不敵な笑みを浮かべて、光に押し当てる刀に更なる力を入れていく。


今すぐに離れたいが、離れた瞬間に斬られてしまいそうだ。そして、巧妙にも安藤からは刀が見えないようにしている。


「お前が師か。不思議なものだな」


「……。安藤、お前は先に帰れ。この男は私の知り合いだ。積もる話があるから、帰りは少し遅くなる」


──いずれにせよ、状況の掴めない安藤に聞かせるような話ではないのは確かだ。


安藤は立花を気にしながらも「はい」と返事をし、一礼をして帰って行った。


「邪魔者が消えたところで、早速行くか。お前の言ったとおり、色々と〝積もる話〟もあるだろうからな」

「往くってどこに連れて行くつもりだ。話ならここですればいいだろ」

「往来の真ん中で腹を割って話せるものか。酒の力も借りたいと思っているんだが」

「……誘拐されそうだから、遠慮する」

「ああ、誘拐か。その手があったな」


──この男とは全く会話が噛み合わない。

愉快げに笑い、冗談めかして言う立花に対し、光は苛立たしい気持ちを隠しきれない。


「私はお前の敵だ。昔のようには居られない。お前が私を好きでも嫌いでも、私の知った所じゃないんだよ。分かるか、敵であるお前とは、本来なら一緒にいるべきじゃない。だから──ここで話そう」


「……そうか」