新撰組のヒミツ 弐

「関係ありません! あたしは先生を守れるくらいに強くなりたいんです。先生のために何かしたい……。


――そんな顔をさせたくない!」


必死の訴えも鹿助には通じない。
ただ紫煙をくゆらせる彼は、出会ったときと相も変わらず、冷たい目をしていた。


「てめえ、俺を舐めてるのか。俺は守られなければ死ぬほど弱い訳じゃねえ。それに、誰かに守られて生きるのは屈辱だ」


「先生!」


堪らず叫ぶ光を遮るように、鹿助は煙管を煙草盆にカンと灰を落とす。次に光を見据えた目は、呆れた表情を含んでいた。


「怪我して身体に傷が残る」


「そのくらいで文句は言いません」


「女に耐えられるものか」


「絶対に耐えてみせます」


「……何故そこまで……」


「強くなったら先生は信頼してくれますか? あたしは先生のために生きてるんです」


言い張る光に向けられる険しく悲しそうな目。何故。何故だろう。先生の為に生きることは決して間違ってはいないはずなのに。


どれくらいの時間がたったのだろうか。
ため息混じりに紫煙を吐き出す鹿助は、その目を様々な感情で揺らしながら、小さく呟くように言った。


「……武術は、てめえの命をてめえで守る為に使え。絶対に殺しには使うな」


「は、はい! 約束します!」


何度も頷くが、鹿助はやり切れないように頭を抱える。指の隙間から見えた彼の表情は、堅く目を瞑り軽く唇を噛んでいた。


「先生……。あたし、先生を守りたいです。だけど……まずは自分を守れるようになります。だから――」