僅かに冷たい視線が光に刺さる。観察されるようにまじまじと――不躾なまでに視線を寄越す早道は、光に忍び寄るような不安と居心地の悪さを抱かせた。


何か彼に悪いことをしただろうか。
悪意を向けられるような、悪いことを。


「師匠、若っい子に手ぇ出したんか……」


「ふざけるな」


「冗談や冗談」


ケラケラと笑う早道の真意は掴めない。だが、その緩んだ顔を一瞬で元に戻し、少し怖い顔を鹿助に向けて言い放った。


「……せやけど、ちょっとばかし腑抜けたんとちゃいます? 女子に現抜かして――」

「……俺が賦抜けた? 戯言を抜かすな」


苛立ったように不敵な笑みを浮かべた鹿助は、黙り込んで会話を見守っていた光の方を向き、「茶を持って来い。半刻で終わる」と強い言葉で命ずる。


「は、はいっ!」


光は弾かれたように立ち上がり、厨の方へ消えた。





鹿助に厨の使い方を簡単に習っていた光は、慣れない作業に四苦八苦しながら茶を淹れる。盆に載せて道場に戻ると、鹿助の「遅い」という仏頂面が雷を落とした。


「茶に一刻か」


「……すみません」