「あら?海翔さんも、このまま朝までコースですか?」

嫌味のようにトゲのある言い方。

「買い物ですが。」

「なんだ。てっきり職権乱用して、遊びまくっているかと思いました。」

「お前と話しているとムカツク。」

「あたしも。そこだけは気が合いますね。」

ニッコリ笑顔で返してきた。

そのイヤミのような笑顔だったから。

「お前さぁ、玄関で寝るの辞めろよ。」

思わず口をついて出てしまった。

綾瀬唯の行動がピクリと止まって、一瞬、言葉につまったけど。

「うるさいな。関係ないじゃん。」

「どうせ、夜遊びしすぎて玄関で寝ているんだろ?」

「…違うから。」

重く口を開いた。

「まさか、酔いつぶれてとかじゃないよな?」

酒臭くはなかったけど。

念を押しておかないと。

「別に、どうだっていいでしょ!?」

急に眉をゆがめながら怒り出した。

「フザけるなよ。未成年のクセに、ビールにタバコなんてもってのほかだ。」

「はぁ?約束ヒトツ守れない人に、言われたくない。」

冷めた目でオレを見た。

「約束ってなんだよ。」

なにかあったか?

「覚えてないなんて、最低じゃん!」

バタンッ!!!!

力一杯ドアを閉めて出ていった。

「何がしたいんだよ。」

ボー然とたたずんでいた。

それからしばらく、綾瀬唯は帰ってこなかった。

大きな荷物だけがポツンと残されていた。

もう、帰って来ることはないと思っていた。