「尚吾!?」

ビックリとかじゃない。

夢でも見ているんじゃないかって思っちゃう。

だって…

家を知らないし。

だいたい、どうしてここに来たの?

思いがけない目の前の状況に、口をパクつかせた。

「おうっ!こっそり侵入するはずが、ここが唯の部屋とはな。電気くらいつけとけよ。」

なんて、笑い混じりに電気のスイッチに手が伸びた。

「やめてっ!!つけないで。」

とっさに大声を出してしまった。

「悪るい。気付かれたらマズいよな。」

ゆっくりあたしの近くに歩いてきた。

「こないで!!帰って。」

ベッドの端でギュウっと強くうずくまりながら声を荒げた。

本当は嬉しかった。

ただ、こんな姿を見られたくないだけ。

「なんだよ…助けてとか帰ってとか。」

イラついた声になるのは当然だと思う。

だけど。

尚吾には知られたくなかったから。

あんなたった一言で。

ここに来てくれたのは嬉しかった。

でも…素直には喜べないんだもん。