シャクジの森で〜青龍の涙〜

ぼう・・・と光りを放っているそれは、蹲って顔を覆っているようだ。

腰まである豊かな髪は、思った通り女性だと見える。



「どなたですか?・・・どこか痛むのですか?」



“―――あ・・・せ・・・はあり・・ん―――”



「あの、大丈夫ですか?わたしは、エミリーといいます」




自然に出てくる言葉を投げかけながら進むと、だんだんに女性の言葉がはっきりと聞き取れるようになってきた。



“―――・・・ありません―――”



「あの、すみません。あなたは何方のことを言ってるのですか?」



何度話しかけても、薄ぼんやりと見える身体はずっと同じ姿勢のままだ。

エミリーの声が聞こえないのだろうか。



“―――あなたのせいでは、ありません―――”



女性は、しきりにその言葉を繰り返してしくしくと泣いている。



「あの・・・・大丈夫ですか?」



エミリーは女性の傍に座り、俯いた顔を覗き込みながら、肩にそっと手を掛けた。

すると、まるでふわふわとした綿に手を置いているような感触がして、心臓がドクンと波打った。



「え・・・?」



思わず声をあげると、女性がゆっくりと顔をあげた。

目も鼻も口もそこにあると分かる程度に輪郭はある。

けれど、全部が真っ白だった。

その姿はまるで、前にギディオンの城の書籍室で見たリンク王のよう。

明らかに、人ではない。


エミリーは震え上がって、声をあげそうになったけれどすぐさま気を取り直した。

その色のない瞳から、涙らしき白い小さな玉がポロポロと零れているのだ。

この女性は、ここでずっとこうしているのだろうか。

リンク王が書籍室に留まり続けたように、何か理由があるのかもしれない。

けれど、こんな暗闇の中、一人きりで誰の目にも触れずに――――



「―――なにを、泣いているのですか?」



優しく話しかけるエミリーを見、女性は口をパクパクさせている。

何かを話そうとしているけれど、どうにも言葉にならない様子。

エミリーは女性の背と思わしき部分をそっと撫でた。



「落ち着いてからでいいです。そうしたら、どうぞ話してください・・・ね?」



微笑みながらもう一度言葉を掛けると、女性の涙が止まり柔らかな表情に変わった。

笑ってはいないが、少しだけ落ち着いたようだ。



「もう、大丈夫なのですか?」



話を待っていると、女性は同じ様な言葉を繰り返すだけだ。

それでもエミリーは、たまに頷きながら黙って女性の声を聞いていた。

すると、途切れがちで掠れていた声が、次第にスムーズに出るようになっていった。