当たり前だ。
 雪をかぶったコートは、すっかり冷えきっている。

 ロイドは温暖なクランベールから、薄手のシャツの上に白衣を羽織っただけの、いつもの出で立ちでやって来た。
 日本のこの冬一番の冷え込みは、さぞや寒かった事だろう。


「どうして今日来たの? 明日でいいって言ったのに」
「明日まで待てるか。十時頃には帰るって言ってたから来た」


 腕時計を見ると、十時半を回っていた。ロイドは三十分くらい、この寒い部屋で待っていたようだ。

 灯りの点け方は分かったようだが、さすがにエアコンは分からなかったらしい。
 クランベールにはエアコンの必要がない。
 どうすれば部屋が暖かくなるのかは、分からなかったかもしれない。


「とりあえず上着を脱げ。直接抱かせろ。いや、いっそ全部脱がせてベッドに連れ込む方が手っ取り早いか。少し動けば身体も温まるし」


 そう言ってロイドは、結衣のコートのボタンを外し始めた。