コンコン。

 軽く、女子シャワー室のドアを叩く。このドアからは中が全く見えないが、時間からして、母親は既にバスルームでシャワーを浴びており、慌ててバスタオルを1枚巻いて、脱衣所のドアを少し開けたようだった。

「ちょっと失礼……」

 俺は素早く、その隙間に入り込む。その時の、母親の顔色といったら、なかった。

「……あ、あの……!」

「奥さん……で、ええかな? あのな、そんなん、ただでこんなことしてくれる人なんか、おらへんよ?」

 俺は、硬直する母親にさっと腕を伸ばした。抵抗する暇もなく、簡単に1枚のバスタオルは下へ落ちる。

「ちょっ……や、めてください……」

 慌てて女は、タオルの上へしゃがみ込む。

「ええ体してるやん♪ しかも、着やせするタイプ?(笑)」

「なっ……なんなんですか!?」

「ええやん、お礼のつもりで。俺は別に娘の方でも良かったんやけどな。ちょっと後味悪いやろ? ……いや、そんな怖い顔せんでも(笑)」

 女は、唇を噛み締めて、きつく俺を睨む。

「声出さんと……、俺の言う通りにしたら、はよ終わるし、な?」