夏きらら




 その日、隆史と祈は畳の間で眠った。

 寝転んだまま昼間それぞれに見てきたものの話をしたり、学校の様子の話なんかをした。

 祈が知りたいかと思って、隆史は学校での早瀬の話もした。制服の早瀬は可愛い、とか…。

「あー…いいな。隆史くん。僕も早瀬ちゃんの制服姿見たいー」

「送ろうか?向こうに帰ってから。早瀬の写真」

「え…。いいのかな。早瀬ちゃんがいいならいいんだけど」

(まだ、知らない扉がある)

 祈は早瀬という存在の向こうに世界が広がっているような感覚にとらわれていた。

「連れて来たかったな…」

 微睡んで眠りに落ちようとする前──隆史がそんなことを呟いた。「え?」と祈は聞き返す。隆史は話してくれた。

「彼女。やっぱり写真なんか見せるより本物見せたかったなとかね。同じ空間で過ごせるの、絶対違う。相手の表情見えるし」

「彼女、名前なんて言うの?」

「ゆま。仁科由真」

「にしなゆま…」

 沖縄育ちの祈には聞き慣れない名字だった。名前がそうだと、やっぱり早瀬や隆史は向こうに住んでいるんだなという気分になってしまう。

「隆史くん…」

「ん?」

「もう一度沖縄に来なよ。今度は彼女連れて」

「……」

「僕も早瀬ちゃんに会いに行く」

 横になったまま祈の表情を窺うと、祈は真っ直ぐに言い切った。

「僕が早瀬ちゃんに会いに行くのが先か、隆史くんが彼女を先に連れて来るか、勝負しよう」

「こんなことで勝負?」

「好きな人と一緒にいたいの、当たり前じゃない?うちの親なんか離婚してるから、僕は出会いも別れも後悔したくない」