「早瀬さん」
母親の早織がひょっこりと姿を現した。
古い家なので、部屋と部屋の仕切りもほとんどなく、ノックをしようにもドアというものがない。
障子のように開閉できる戸らしきものはあるが、動かす度にガラガラ音がするの、あまり使わないのだと志麻子は話していた。
「何?」
「もう少し起きているの?」
母親なりに心配はしているようだ。
早瀬は「やっぱり」という表情になり、素直にすっと立った。
「そうね」
隆史の方が意外そうな顔をした。
「やけにあっさりしてるんだな」
早瀬は笑った。
「明日も会えるもの。おやすみ、祈」
早瀬が行ってしまって、男ふたりがその場に残される。
「いいのか?」
隆史が祈に聞くと、祈は「何が?」という反応だった。
「隆史くんとだったら一緒に眠っても問題ないだろうけど、早瀬ちゃんはね。僕が困る」
「……」
「一緒に過ごしたい気持ちはあるけど」
祈は畳の上に寝そべった。
「刹那的には考えられないんだよね。本気になってしまったら…。だから苦しい」


