花火を探しに。
たったそれだけのことが何だか特別なことのように嬉しい。
朝、祈が家に訪ねて来てから、早瀬の気持ちはめまぐるしく変化している。
「祈、お金持ってる?」
「んー少しだけ。持っている範囲で買えたらいいよ」
「私、半分出す」
「え。いいよ。僕が出すよ」
「いいの。半分こにしたいの」
半分こ、という言い方が何だか早瀬のお嬢様なイメージに似合わず、祈は笑った。
「半分こって、お菓子か何かみたい」
「変?隆史がそうなのよ。男のプライドがあるのか知らないけど、過剰サービス。お小遣いは一緒なのに。女ばかり男に奢らせてるイメージって、何だか好きじゃないわ」
「隆史くん、そうなの?」
「そうなの」
「早瀬ちゃんが可愛いからじゃないのかなあ」
「何なの可愛いって。見た目なの?」
「そうじゃないよ。早瀬ちゃん、こういう真っ直ぐなところも、何かやらかしそうで危なっかしいから、守りたくなる感じするんだよ」
祈の言動が逆に早瀬には可愛く見える。
屈託がなくて無邪気。その祈といて楽しいと思っている自分がいる。
「祈も可愛いよ」
自分ばかり可愛いと言われるのもなんなので、早瀬はそう言った。
「可愛いって言うと怒る男子っているけど、でもね、何となく可愛いっていう表現になっちゃいの。気を悪くする?」
「それ、好きっていう意味の可愛いでしょ?」
「え…。そうね」
「それなら問題ないよ」
早瀬には非日常の南の国の空間だったが、祈にも今までとは違う非日常の景色に見えていた。
それはそうだ。
早瀬という女の子がここにいて、自分と同じものを見ているから。


