「祈は日に焼けてるけど」
「うん。僕、外で絵を描くことも多いんだよね。あ…スケッチブック、見る?」
「見たい。祈、元気ね。今海に行ってきたばかりなのに」
「はーい。元気なのが取り柄でーす」
「祈見てると退屈しないわ」
「そう?僕、面白い?」
「新鮮だわ」
「畑で取れた野菜みたいな言い方」
「食べるわよ」
「わー。早瀬ちゃんに食べられるー」
早瀬から逃れるようにゴロゴロと縁側を転がって、しゅたっと立ち上がった。
「スケッチブック取ってくる。…あ」
「何?」
「湿布、まだある?おじいちゃんのところから持って来ようか?」
そこは早瀬も気が回っていなかった。
砂浜を裸足で歩いたから、湿布は貼り替えた方がいいかもしれない。
「あ…うん。同じものがあったら」
早瀬はお金を渡して、祈にお願いした。
祈が行ってしまって、早瀬は足に貼った湿布をめくってみる。
「やだ…少し日に焼けてる」
湿布の形が残ってしまっている。何だかカッコ悪い。
でも早瀬は楽しい気持ちで満たされていた。
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