早瀬は好奇心が先に立ち、つい本音を言ってしまった。
「私も星砂探したい」
こんな楽しそうなところに来て見ているだけなんて、つまらなすぎる。
祈が苦笑した。
「早瀬ちゃんらしい。いいよ。僕は。足、大丈夫?」
「大丈夫」
言葉で自分に気合いを入れ直して、早瀬はゆっくり立ち上がると、祈と手を繋いで砂浜に歩き出した。
しかも裸足で。
「わー。何か楽しい。砂白ーい」
砂の感触が嬉しい。
あちこちにカニが穴を掘っていて、祈と早瀬が近くまで来るとサッと穴に隠れてしまった。
砂と同じ色のヤドカリがのどかに歩いていた。
ふたりで星砂のありそうなところの砂を海水で洗ったコップに入れていると、遠くから声がした。
「おーい。祈ー」
祈が顔を上げる。ふたりのいた階段から何メートルか離れたところから、中学生くらいの男子が声をかけてきた。
「お前、何やってんのー」
「見てわかんない?デートー」
冗談のように祈は返す。はぁー?と聞き返すように男子が声を放った。
「デート?ありえないし。つーかお前学校はー?」
「あは。天気がいいから、自主休校ー」
「ううわ。それもありえねー。そこの綺麗な子誰ー?」
「祥太郎には教えなーい」
「なんじゃそら!」
「嘘。後で教えるねー」
手を振って、男子は行ってしまった。
祈は笑って「クラスの子だよ」と話した。
早瀬の関心はそれよりも別のところにあった。
「──祈、今日学校あったの?」
祈は何の迷いもなかったように頷いた。
「うん。朝、早瀬ちゃんの顔を見た時、早瀬ちゃんと過ごしたくなったから」
「どうして…?」
「んー…。だって、学校は卒業するまでずっとあるけど、早瀬ちゃんとはこの瞬間しか一緒にいられないかもしれないでしょ?」
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