夏きらら




「祈の描く絵、見てみたいわ。後で見せて」

「ほんとに?じゃあ、後でね」

 砂浜が陽の光を受けて白い。祈が海で遊びたそうな様子だったため、早瀬は祈に「行ってきていいよ」と言った。

「せっかく来たのに。私はここで待ってるから祈は海でしばらく遊んできて」

 祈は嬉しそうに立ち上がった。

「じゃあ、早瀬ちゃんが喜びそうなもの、探してきまーす」

 白い砂浜に駆け出して行ってしまった。

 海は遠浅で、かなり沖まで行っても、海水は祈の膝にも届かないくらいの深さだった。

 ぽつんと遠くに見える祈が手を振っている。早瀬は振り返した。

 何だか幸せだ。

 しばしして祈は海や砂浜で拾ってきたものを見せてくれた。

 色とりどりの二枚貝や、珊瑚の欠片、ウニの殻、砕けた硝子瓶が波に研磨されたもの。

「綺麗ね。何か作れそう」

 つやつやしたうす紅の貝殻をひとつ手に取る。

 爪よりもまだ小さいくらいの二枚貝の種類はひとつではなく、並べてみるとアクセサリーが作れそうだった。

 波で角がとれてまるみを帯びた硝子瓶の欠片は、緑、茶色、白という自然な彩り。

「これは写真立てのふちに出来るね。ボンドか何かでくっつけて」

「それいい。涼しそうね。こっちの薄紫のサッポロポテトみたいなものは何?」

「あはは。サッポロポテトって、早瀬ちゃん」

「似てない?」

「似てるー」

 網目状の四角いその物体は、丁度サッポロポテトを何分の1かに縮小したような大きさだった。

「これは珊瑚の欠片。こういうのがもっと細かく砕けて、星砂になるの」

「え?星砂って珊瑚なんだ」

「そう。ロマンチックでしょ。星砂も拾って来ようか?」

「普通に落ちてるの?星砂って」

「うん。粗めの砂のところで探せばあるんじゃないのかな」