「はい。楡崎です」
電話は早織からだった。
早瀬ではなく祈が出たことに驚いたのか、一拍間を置いてから『もしかして祈くん?』と尋ねる。
「はい。シークヮーサーを持って来たら、早瀬ちゃんが一人だったので、早瀬ちゃんと縁側でシークヮーサージュース作ってました」
『あら、そうだったの。良かったわ。お昼のことで電話したの。祈くんのおじいさまが一応お昼に様子を見に来てくれるって仰られてたんだけど』
「あ、それは聞きました。今お昼の話、早瀬ちゃんとしてたので、僕お昼一緒に作ります」
『あら、そうなの?それなら安心ね。じゃあ、祈くん、お願いね』
「はい。お気をつけて。楽しんで来てください」
早織からの電話が切れ、祈は縁側に向かって声を投げる。
「早瀬ちゃん、お母さんからだったよー」
「え?何て?」
「お昼のこと心配してたみたーい」
「そう。大丈夫って言ったのに。ありがとう、祈」
「お昼どうするつもりだったの?」
「今日の朝食の残り物とか、冷蔵庫のものを温めるとかで、大丈夫かなって。心配性ね」
ジュースを注いだグラスは空になっていた。
空が青い。
「今日もいい天気ね。散歩にでも出掛けたいわ」
「──出掛ける?」
「え?」
「自転車乗って。僕がこげばいいし」
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