夏きらら




 グラスの中でカランと氷が音を立てた。

 果実を搾ったものに砂糖と水を足して、グラスに注いだシークヮーサージュースは、爽やかな淡いレモン色。

 見た目だけでも涼しそうな飲み物になる。

「早瀬ちゃん、どうぞ」

 祈に差し出されて、早瀬はグラスを受け取った。

 一口飲んで「美味しい」と顔がほころぶ。

「でしょ?良かった」

「これ、夏なんかにはいいわね。うちのお店にも置けないかしら」

「早瀬ちゃんの家はお店かなんかやってるの?」

「うん。料亭と旅館ね。日本料理が主なんだけど」

「わ。料亭?じゃあ料理とかも上手い?」

「お店に出すものの作り方はひととおり見てきているわ。簡単な賄いを任される時もあるし」

「食べてみたーい」

「ふふ。食べるの好き?」

「うん。毎日ご飯があるのって『ありがとう』って思っちゃう」

「お昼、一緒に作ろうか?」

「足大丈夫?」

「椅子を持ってきて座って作れば大丈夫じゃない?1日中動けないのもつらいわ」

「じゃ、一緒に作ろう。何にする?」

「うーん…。沖縄にしかない食材で私でも作れそうなものってない?どうせならここでしか作れないものを作ってみたいわ」

「何があるかなー…。手が込んでないものがいいよね。お昼だし。ラフテーとかは時間かかるし。ナーベーラーチャンプルーの要領でゴーヤーチャンプルーを作るっていう手もあるけど。ニガウリ、食べたことある?」

「ううん。ナーベーラーは美味しかったけど。ニガウリのことはゴーヤーって言うのね。やっぱりニガウリって苦いの?」

「うん。苦手な人もいると思う」

「まず試しに作ってみたいわ。料亭の娘があれこれ食べられないものがあるのもなんだし」

「決まりね。じゃ、畑からゴーヤーとってきまーす」

「え?ゴーヤーもあるの?」

「うん。そろそろ食べられる頃だと思う」

 祈は立ち上がる。

 ──と同時に電話が鳴り出したので、祈は「大丈夫。取るから」と早瀬に言って、家の奥に入って行った。