海宝堂〜海の皇女〜

ニーナの放った炎は大ガニの頭で弾けた。
ひるんだ隙を見て、リュートとガルが戻ってきた。

「ヤバかった…」

肩で息をする2人を気遣いながらもシーファはガルの持つ短剣に興味があった。

「ガル、それって…」

「ああ、俺の武器、
『地変(じへん)』だ。
土の属性で触れたものを…」

「キュ、キュキュー!」

イルカの鳴き声と大きな水音が聞こえた。
見ると、大ガニはイルカ目掛けてハサミを振り下ろしていた。

「大変っ!」

「自業自得だろ?あいつがカニ、起こしたんだし。」

「可哀想だけど、お腹が膨れればまた寝ちゃうだろうし…」

2人の言い様にシーファは眉をしかめた。

「諦めろ。
あのイルカが逃げないなら話しにならない。」

「確かに…海に繋がってるのなら潜って逃げればいいのに。」

イルカはいくらハサミを振り下ろされようとも、泉から姿を消そうとはしない。ただ、鳴き声をあげるばかりだ。

「―――っ!」

飛び出そうとするシーファの肩をガルが掴んで止めた。

「シーファ!もう、無理だ。」

「でも、助けて…助けてって言ってるっ、そんなの見過ごせないっ!」

ガルを振り払い、シーファは飛び出した。

「ガルっ!なんで離すのよっ!シーファ!戻って!」

ニーナの呼び掛けを無視して、シーファは大ガニのハサミに飛び乗った。

「その子を離してっ!」

馬乗りになって、ハサミの間に手を入れると、力でこじ開けようとした。

「いや、それはいくらなんでも…
俺のでやるか?」

「いや、お前のはシーファまで感電しちまう、ニーナ、足の付け根狙えっ。」

ニーナは弾火を構える。今度は一丁のみ…
狙いをつけて…放つ!

見事に命中し、驚いた大ガニはイルカを離した。
すると怒った大ガニは、ハサミを振り回し、暴れだした。

「きゃあああっ!」

捕まっていられなくなったシーファは飛ばされ、壁にまともに直撃した。