船は順調に進路を進み、リュートも見事なベッドを作り上げた。

女部屋に運び込むとぴったりで、リュートは鼻高々で威張っていた。

みんなで取る昼食。
シーファはここでみんなの意外な性格を目の当たりにした。

リュートは一見、大雑把であけすけな性格だが、ガルを笑いながらもその料理は残さず、しかもとても綺麗に食べていた。

ニーナはいつも先を考え、冷静だが、お酒が入るとかなり喜怒哀楽が激しくなる。泣いたかと思うとすぐに笑って、しかもその原因がよくわからない理由なのだ。それから、嫌いな物は一切食べなくて、好きなものばかりを口に運んでいた。

ガルは見た目通りにお酒に強く、やっぱり料理好きだったが、結構神経質で料理の盛り付けは当然、テーブルの上のフォークやナイフ、コップの位置までこだわっていた。

シーファには海を旅する人達のイメージというものがあり、そのイメージをことごとく打ち破られたのだった。

日が真っ赤に燃えて沈んでいく。
シーファは甲板でそれを眺めていた。

「シーファ、何見てんの?わあ…綺麗ね。」

ニーナが隣に立って同じように海を眺める。
しかし、シーファは眉をしかめて遠くの海を指差した。

「あ、あれ…何?」

「え?どれ?」

船の前方の海面に小さな影がたくさん見えた。

「ちょっと…近付いてきてない?」

「う、うん…なんか…嫌な予感が…」

影はどんどん船に向かってくる。
ニーナは叫んだ。

「ガルっ!リュートっ!急いでマシュー、動かすわよっ!」

「あ?なんでだよ?」

いいから!と2人に帆をたたむのを指示してニーナは舵の前に立った。

一気に船の上が慌ただしくなる。
ガルがマストに登り帆をたたむと、リュートがオールを出してくる。

「目一杯こいで!」

ニーナの掛け声に合わせてガルとリュートがオールを動かす。

船は方向を変え始めたが、影はあっという間に目の前に迫る――