「私は…この国の事、大好きよ…」

シーファは途切れ途切れに言葉をつむいでいく。

「守りたいとも思ったし、みんなに必要とされてる事も知ってる…」

「シルフェリア様…」

「でも…でもね!悔しいの!
あなた達に必要とされなかった…!
悔しくて…父上に背いて、兵士達やっつけて、ここに来たの、もう戻ることは出来ない。」

シーファの言葉にポムや集まった人々に衝撃が走る。

「そんな…っ、シルフェリア様…」

「これから、この国はカイルが治めるわ。
私は自由にどこへでも行ける。もうここには戻らない覚悟をした。
その上でみんなにもう一度頼むわ。

私を一緒に連れてって!

でも、あの時とは違う。神殿に行くまでなんて言わない、もう、あなた達としか旅はしたくない。
海宝堂に入れて欲しいの!」

拳を握りしめながらの必死の言葉に3人は顔を見合わせた。
リュートがニヤリと笑う。

「そこまで熱烈に告白されちゃあなあ〜ま、悪い気はしねぇよな?」

「海図の見方、覚えてもらうから。あと、舵の取り方に…やることはたくさんあるわよ?」

2人の言葉にシーファはうんうんと力強くうなずく。

そして、ガルの言葉を待つ。


「…………来い。」

シーファは出されたガルの腕に飛び込んだ。
マシュー号は揺れながらも新しい仲間を歓迎した。


「よし、準備はいいな。」

「シルフェリア様、お元気で…」

置いてあった荷物の服に着替えたシーファはポムの手を取った。

「ありがとう。みんなも元気で!この国のこと、絶対に忘れないから。
あと、ジムに謝っておいて。」

マシュー号がゆっくりと岸から離れていく。
シーファの旅立ちを涙で見送る人々が手を振った。
シーファも精一杯、いつまでも手を振り続けた。

この日、『シルフェリア・ウ・トイス』は『海宝堂のシーファ』になって、旅立った。