話をするのに王座の間では広すぎ、人払いも困難なため、シーファ達はマーリンの自室へと案内された。
カイルは同席したいと申し出たのだが、リタの体調が崩れたため、部屋に付き添い、叶わなかった。

マーリンの部屋には前王の肖像画が掛けられ、一級品の家具が並んでいた。
マーリンはにこやかな顔でリュート達、海宝堂の話を聞いていた。
そして、お茶を運んできたメイドが部屋を出ていくと、マーリンは大きく息を吐いた。

「シルフェリア…この3年、一体どこにいた?」

「…テラカイズ島におりました。
変装をし、孤児院で働いて暮らしていました。彼らとはそこで出会いました。」

「……そんな目と鼻の先に…」

「何故、修道院に行ったなどと嘘をついたのです?私は…」

「わしは、この国の次の王はお前しかおらんと思っておる。」

マーリンは真剣な顔付きに変わると真っ直ぐと見つめた。

「しかし!私は一度この国から逃げ出しました。もう二度と戻らないつもりで…」

「じゃが、お前は戻ってきた。それはこの国の将来を案じてじゃろう?」

「……そうです。」

「ならば何も問題はない。………頼む、王位を継いでくれ、シルフェリアよ。」

マーリンはシーファに向かって深々と頭を下げた。

「父上…嫌です、私は…この国には留まりませんっ」

「…許さぬ。この父の生涯の頼みじゃ、必ず受け入れてもらう。」

マーリンの有無を言わさぬ迫力に、言葉を無くしたシーファは部屋を飛び出した。

「シーファ!」

「待ってくれ、そなたたちには聞きたいことがまだある。」

後を追おうとした3人にマーリンは言った。
その口調には何かが隠されているようだった。