城に近付く複数の影。
トイス城の門番はその不信な来訪者に警戒を強めた。
だが、影が近付き、その姿が鮮明になるにつれ、それは歓喜へと変わっていった。

「…只今、戻りました。」

シーファがそう言うと、門番はぴっと姿勢を正した。
ゆっくりと門が開き、伝令が走った。

『シルフェリア王女がお戻りになられた!』

その一言で城中が歓喜に満ち溢れた。

「シルフェリア様っ!」

第一のドアをくぐった所できちんとした服で身を固めた老紳士が走ってきた。
白い髭が品格を表している。

「レイトン、戻りました。
父上はどこに?」

「は…はい。王は王座の間においでになります。」

「わかりました。
…心配をかけました。」

そう言って赤い絨毯の上を歩いていくシーファにレイトンは深く頭を下げた。

「誰だ?あれ。」

「執事長のレイトンさん。ポムじいちゃんと同じぐらい古株なの。」

「ふぅん…
にしても、お前んち、すげーな。」

リュートが高く、美しい装飾が刻まれた天井を見上げて言った。
やはり、一国の城。
今まで見てきたものとは格が違う。
口を開けたまま見上げるリュートの足に激痛が走る。

「恥ずかしいでしょ!きちっとしてなさいっ!」

「いてぇ〜っ!
すごいもんはしょうがねえだろ!」

「リュート。いいから、黙ってろ。」

2人から攻められリュートはおもいっきり膨れると、シーファに頭を下げていたメイドと目が合い、笑われて顔を慌てて戻した。

「ほら、笑われた。」

「うるせ!」

「ふふ…
着いたよ。ここに父とカイル、それから…」

「王妃も一緒か…」

シーファはこくんとうなずくと、自分でドアに手をかけた。