「それより、今度はシーファの話を聞かせて?」

ニーナが言うとシーファは首を傾げた。

「私の事はペックさんの家で話したでしょ?」

「いいえ、ずっと不思議だったの、何故、一国の王女様がそんなに戦い慣れしてるのか、が。
普通、王女様っておしとやかで、優雅で、ナイフとフォークより重いものは持てない、って感じじゃない?」

「はははっ…そうね。これでも城の中ではおしとやかにしてたのよ?当然ダンスだって踊れるし、上品な振る舞いだってできますわ。」

シーファはそう言うと立ち上がって、ドレスの裾を持ち上げる仕草でゆっくりとお辞儀をしてみせた。

「城の中“では”だろ?」

ガルのツッコミに顔だけ上げて舌を出すと、どっかりと樽に座り直した。

「そう。王になる為の勉強がたくさんあるんだけど、その中で一番楽しかったのが武道で、他の事はそっちのけで、いっつも師範の所に行っては勝負を申し込んでた。」

「強いのか?その師範ってのは。」

「ええ、とっても。何度人前に出れない顔になって、城のおばば達に叱られたことか…
師範もその度に叱られるんだけど、次の勝負を絶対に受けてくれた。しかも、超本気で。」

とっても嬉しそうにシーファが笑うので、3人も自然と笑顔になった。

「で、それが5才ぐらいの時からだから、そりゃ、慣れるわよね。
城を出ても、朝と夜の基礎は欠かしたことなかった。
でも、昔は誉めてくれても、今はみんなに叱られるんだろうなぁ…」

「何?後悔してるの?」

「してないわ!後悔なんて、絶対に。」

「でしょうね。
あ、ねぇ、友達は?まさか、オジサンばっかりと一緒にいたってことはないわよね?」

シーファは大きくうなずいた。

「ええ、もちろん。城には同じ年の子はいないから、父と城下町に行ったときに沢山遊んだわ。
鬼ごっこにかくれんぼ、あ〜懐かしい…
あ?でも、後悔はしてないから!」

シーファは慌ててそう付け加えた。