「私はトイス王国が大好きです。父はとても立派な人で、民はいつも笑っていました。そんな国をいつか私が引き継ぐのだと、父は国中に連れていっては話してくれました。
確かに、民の笑顔を守りたいと思っていました。
でも…窓から見える海に…水平線の向こうにあるものに、憧れてやまなくなったの。」

シーファは胸の辺りを強く握った。

「王としての自覚とはかけはなれた感情に私は戸惑い、悩みました。そんな時、父と母…カイルの母が話しているのを聞いたの、私の出生の秘密を…」

「うう…シルフェリア様…」

「ペックさん、私は悲しくなかったの…
逆に嬉しかった。もちろん、育ててくれた両親に感謝の気持ちもあるし、その恩に報いたいという気持ちもありました。
でも、それが私には足かせのように思えて…それが一気に無くなって、体が信じられないくらい軽く感じたの。」

シーファの笑顔にペックはとても複雑だった。カーラも同じようだ。

「でも、誰にもそんなことは言えず、こっそり城を出たの。
この島に来て、お金を貯めて自分の船で海に出るつもりでペックさんとカーラ先生には全てを話して、手伝わせてもらっていたの。」

「?…おかしくない?それなら、私達に連れていってって頼まなくてもいいんじゃない?」

「ニーナぁ〜そんなの俺達が気に入ったからだろ?なあ?」

リュートのバカにした言い様にニーナのイラつきは最高潮に達した。
問答無用で拳が落とされた。

「あんたにバカにされるくらいムカつくことはないわ!」

「いてぇ〜…じゃあ、なんでだよ!シーファ!」

「えっと…それはね…」

「俺達を利用しようとした、ということだろ?」

今まで黙って聞いていたガルがようやく口を開いた。しかし、その口調は決して優しくなかった。
シーファはその刺すような視線を真っ向から受け止めた。